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松ヤニを塗りたくったような乱杭歯がハーランの口から覗いていた。
カメヤマは彼の話を簡易食事を食べながら聞いていた。四角い黒いブロックだった。
喉に張り付いたブロックに不快感を感じながらカメヤマは話に答えた。
「それはそれは…大変なことですね」
短い言葉でカメヤマは返した。
ハーランはまだ話そうとしたが宇宙船のアナウンスで遮られた。
「エウロパ。エウロパ。皆さん着陸しますので着陸のご用意を」
エウロパが見えてきた。
カメヤマは座っている席の右隅のボタンを押した。するとカメヤマの足を固定する器具が席から出てきて固定した。
ハーランは訳もわからずおどおどしていた。
カメヤマは彼に丁重に説明した。ハーランは乱杭歯を覗かせて笑っていた。そして感謝の言葉をカメヤマに伝えた。
カメヤマは彼の笑顔が無邪気なことに気が付いた。彼は多分子供のまま成長したのだろう、地球の塗り忘れた絵画のような辺境の何もない土地で過ごしたのだろう、カメヤマは無意識に彼を差別していた、下に見ていた。
しかし彼は気が付いた。というより思い出したのだろう、自分はハーランよりも今は下だと何故ならだ、ハーランが犯罪をしたことがあっても、カメヤマよりはマシな犯罪だ、その内カメヤマは指名手配されるだろう。
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