転落

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カメヤマは自分が指名手配されるのではと思い出した。 自分が指名手配になって捕まれば、本当にサイアンの人生を狂わしてしまう、まだ若い彼の人生を一生牢獄に閉じ込めてしまうかもしれないのだ、そう考えるとカメヤマは少し身震いをした。 アンはどうなってしまうのだろうか、アンドロイドの法律はよく分からないが言う事を聞かない機械なんて廃棄するのだろう、何も映らなくなったテレビなんて捨てるのだから。 カメヤマは自分が自分自身の事に心配してなかった事を知らなかった。 彼は自分自身はどうにかなると、少し心の奥で思っていたのだろう、世界一の手品師の私なら…と。 彼はもう世界一の手品師ではない。手品師ではあるかもしれないが多分肩書きは違うだろう、偽なんて着くかもしれない。 宇宙船は揺れだした。サイアンの飲料水が溢れそうだった。 サイアンとカメヤマは何度も宇宙船に乗った事は有ったが、ハーランは無さそうだった。アンも多分宇宙船の着陸の時は電源を落とされてたのだろう、しかしアンは冷静だった。 ハーランの小さな小さな心臓は一生懸命に血を身体中に送っていた。鈍い痛みが固定されている足に伝わる、痛みといってもほんのり小さな痛みだった。 普通の血の量なら痛みを感じなかっただろう、しかし今回は小さな心臓が人生の中で一二を争う仕事をしていただから彼の足はほんのり痛かった。 血が身体中に巡っている感じは生きている感じがするんだなぁ…。
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