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彼の大柄な体にそのシルクハットは余りにも不似合いで滑稽だった。彼は世界一の手品師にだった時は誰も彼のその姿を笑わなかった。しかしここの連中は彼の姿を人目をはばからず吹き出していた。
サイアンは心配していた、彼の一番大切な物を笑われて怒るのでは無いだろうか、これまでで一番激しく怒るのでは無いかとしかし彼は安堵の顔をしていた。サイアンは意外なその顔にすこし肩すかしを食らった様な気がした。
カメヤマの心中は何故か平穏であった。食材の遺伝子組み換え肉のパックを取っている時に小さな子に笑われていたても彼は平穏だった。
サイアンは少し不気味な気がした、気でも狂ったのでは無いかと…そのうち痺れを切らしたバネ人形の様に暴れ回るのではないかと、鳥に首元を啄ばまれる魚の様に。
カメヤマはカレーの食材を買い終わり、サイアンと帰路に着いた。アンは先に米を炊くために帰っていた。
サイアンはカメヤマに聞いた。
「なんで…シルクハットを笑われて…怒らなかったのですか?」と灰だらけの泥で塗装された様な悪質な道路を見ながら聞く。
「彼等はね…シルクハットを笑ったのではありませんよ…このシルクハットに不似合いな私を笑ったのです。それに怒るのは見当違い、芝違いですよ、それこそ気違いです。」
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