遠い未来の日本人

転落

それに続けて彼は言う。
「サイアンは居なかったと思いますが、私がまだ手品師のひよっこだった頃、私は笑わせる、詰まりは本当の意味でのピエロ役という事をしたことがあるんですよ、小さい子供達はね私のこの不摂生な体を見て、笑っていたんですよ…」と最初の語り口は意気揚々としていたのに対して彼は最後の方に行くにつれて消沈していった。昔が懐かしく感じたのだろう。
サイアンは何も言わず唯頷いていた。彼の言葉を反芻していた。
カメヤマは買った、乾燥フルーツを口に入れ、続ける、彼が口に入れたフルーツは彼の唾液にてふやけていく、ふやけるフルーツの表皮から甘い汁が口の中に垂れ出る、この感覚がカメヤマは好きだった。
「私が…なんとか星にて一番の手品師やら、なんとか星雲にて一番の手品師やら、なんとか小惑星郡で一番の手品師やら…そんな肩書きで呼ばれ出すと子供達は笑わなくなりました。」
乾燥したフルーツの甘い汁が出にくくなると彼はそれを噛んで飲み干した。
そして彼は又袋から乾燥したフルーツを又一粒取り出して口に入れる。