転落

2/23
前へ
/54ページ
次へ
とても小さな診療所、床の金属は錆びており天井には苔が生えていた、衛生観念等無い診療所だった。 診療所のベットには太った男性が眠っていた。その側には整った顔立ちの女性が座っていた、白いニットを被っており、美しい赤毛の髪を隠していた。彼女はアンであった。 彼女はコンピュータの脳で考えていた、何故私はこの男の傍に居るのか、合理的に考えればコスモポリタン全域の名誉を失った手品師いいえ詐欺師の傍に居る必要はないわ。 彼女は幾度か診療所から去ろうとしていた、しかし彼女はその度に踵を返して帰ってきた。 彼女は診療所で眠る男の足元にあるテレビの電源を付けた。コスモポリタン中の視聴率ランキングで毎回一位を叩き出した番組が放送されていた、司会者の男はモニターを指差して喋っていた。 「カメヤマ・エイチキ、彼はね、ドラッグを観客に使用してたんですよ?詐欺師詐欺師、詐欺師より厄介だわ、コスモポリタンNo. 1の手品師?そんな訳ありませんよ!」 アンはテレビのモニターを見ていた、その後カメヤマの手元に目を伏した。 彼はもうコスモポリタンではマトモな職には付けないでしょうね…。 彼女はカメヤマの豊富な贅肉の腹に頭を乗せた、雷鳴の様な音が彼の腹から聴こえてきた。ノンキなものね…。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加