遠い未来の日本人

転落

唯、アンはある事を自身のメモリーに刻んだ、彼を守ってあげよう、なんでそんなことを誓ったなんて彼女は分からなかった。けど彼女のその誓いは若き乙女の初恋の思いより強かった。
彼女はサーカス団で壊れるまで働く設定だった、しかし彼女は薬を使用していた。その薬は"シノセント"と呼ばれる薬だった、そうカメヤマのマジックを破った薬品だった。
その薬品のお陰で彼女は役目を忘れていた、だから彼女はこうやってカメヤマのお腹の上で眠っているのだ。
カメヤマのお腹が鳴っていた、彼は5日寝ていた。頭に鉄パイプの椅子が衝突したのだ、だから彼は寝ていた。
彼の恰幅の良い体には、5日の絶食はキツかったのだろう。
アンはカメヤマのお腹の音を聞きながら、医者の言ったことを反芻していた。
医者は起きる時にはお腹が減っているから何か食べさしてあげなさい、5日後には起きるでしょうから、なんて言ってたなと彼女は反芻していた。
アンは診療所から出て行った、食材を買いに行ったのだ。
診療所の鉄格子の窓から外に降っている、雨が見えた。雨が町の景色を鮮やかにしている。診療所から少し出たところでは昼顔の花が咲き出した、淡いピンクの花弁にクマバチが誘われていた、その虎模様の腹をヒクヒクと胎動させながらミツを吸っていた。