カテドラル

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 先生は氷入りのグラス二個とウィスキーのボトルを持ってきて私のとなりに座った。 「真似してって…さすがですね!私にはロダンとの違いがわかりません」  手渡されたグラスに液体が注がれていく。滑らかな音が耳に心地よい。 「模倣なんて容易いもんだ」 「凡人にはまったく理解できません。そうだ、先生は誰と誰の手だとおもいますか?」 「それはモデルという意味で?作品のコンセプトとして?」 「…コンセプト?ああそっか」  昼間、美術館での自分の苛立ちの理由がわかった気がした。ロダンの意図や自分の感受性を無視して、彫刻家の私生活を持ち出したことに違和感があったのだろう。それなのに今、私はなにを言った? 「聞き方を変えます、なにを表現したかったんだとおもいますか?」  先生は、「そうだなぁ」とグラスを傾ける。 「安っぽい表現は避けたいんだけど、愛としか言いようがないよな。キリスト教的にはアガペーというのか、だから二つの手は誰かと誰か、他者であることが重要だった」 「…なるほど」
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