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「というわけで、さっきその石膏を見てセクシャルって言ったきみの感覚は、あながち間違っていない」
「作った人が世俗にまみれてるから!」
「そういうこと。そもそも僕はクリスチャンじゃないしな、根底の宗教観までは表現できない」
まるで学生時代に戻ったようで楽しい。
「先生はどなたとロダン展を観てきたんですか」
「なんだ急に」
「なんだもなにも、ただの質問ですよ」
「答えたくない」
「でたよ秘密主義、卒業してから十年経つんですよ?もうそろそろ心を開いてくれてもいいとおもうんですけど」
答えがほしいわけじゃなかった。話しかけていないと、ふいと隣から離れていってしまいそうだから。
「先生と呼ばれてるうちは開くものも開かんよ」
予想外の言葉に咳き込み、「どうしたんですか?」と聞き返してしまう。
「なにが」
「え?いや…なんか、意味深な気がしたんですけど…そうでもないんでしょうか…」
先生はなにが意味深長なのかを考えているようだった。私の自意識過剰に付き合わせて申し訳ない。
「す、すみません。いいんです、私がこじらせすぎているだけです」
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