司法の判断

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「やあやあおにーさん! 久しぶりだね」親指を折り手を挙げる老婆。  おにーさんは、並んでいる人達の間をかい潜り、「君が絵里ちゃんかい。初めましてこんにちは」と挨拶を交わす。絵里も元気良く挨拶をして、「こんにちはおにさんだよね。おにーさんってなにおばあちゃん」と問い掛ける。  おにーさんは、老婆の顔を見て「その通りだよ。いい加減覚えて下さいよ! 私はおにーさんでは無く鬼さんですよ。ねえ絵里ちゃん」  そう、正しくはおにーさんでは無く、おにさん、『鬼』であった。薄い頭のてっぺんに、角が一本生えている。 「やかましいよ! あたしゃ、如何しても歯が無いからそうなっちゃうんだよ」上の前歯、下の前歯も、二本ずつ無く、空気が抜けるらしい・・・ 「大王様は、まだ手が空かないのかい」 「もう、そろそろ手隙だと思うですけどね」 絵里は指を咥えながら、やり取りを見ていた。良い大王が、判を押しながら、「○○ 行き」「○○ 行き」と、判断を下し、並んでいた者は、「やったーー」と、大喜びする者、「なんでだよー」と、床に、屈する者がいた。大喜びした者は、別の扉が開かれ、後光の差す場所に行く。屈した者は、床が開かれ、ブクブクと泡立つ所に落とされた。     
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