それは突然に

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それは突然に

「じゃあ、高校最後の文化祭のステージ発表は、学園モノのミュージカルに決まりね」 先日から何度目かのホームルーム。 クラス委員の安城さん(安城紗弥香:あんじょう さやか)が満面の笑みで宣言する。 ミュージカルをするのかそれともコントをやるのかの話し合いでも中々決まらず、前回のホームルームで両派の話し合いは決裂し、今日は決選投票をすることになっていた。 それなのに。 よりによって今日風邪で欠席した滝山君のせいで、投票結果はまさかの同数。 この戦い、両派の中心的メンバーから外れているその他大勢(要は『どっちでもいい、てか、むしろ関わりたくない』派)にとっては、難しい選択が迫られる。 文化祭とその前の準備期間を“空気”のように過ごすためには、仲間に引き入れられないためにも、“負けそうな方”に投票する必要がある。 どうせミュージカル派もコント派も、中心的メンバーのヤツら、いわゆるカースト上位のヤツらは、自派が投票で負けたとしても、反対側のグループを積極的に手伝うようなヤツらだ。だから、なんやかんやで、どっちに転んでも、メンツは足りている。 ヤツらは、結局自分たちが目立って、楽しければいいのだ。 一方、私、桂木圭子(かつらぎ けいこ)ような、名前も地味で、クラスの隅っこで目立たなく過ごしているカースト下位の存在は、負けチームに入ることで、あわよくば無役のまま、無役は無理だとしても、簡単な小道具係くらいでお茶を濁したいと思っていた。
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