それは突然に

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盛り上がってるグループと、逃げ出したいグループ双方の、異なる思惑による空気の読み合い。 それがカチッとハマってしまい、投票はなんと同数。 もう一回やってみても、空気の読み合いは続き、また同数。 仕方ないので、クラス委員の紗弥香が先生の許可を得て、ホームルーム中に滝山君の個人のLINEに連絡を入れて、どちらに投票するか質問した。 すると滝山君からあっさり“ミュージカル”と返信があり、先程ようやく決まったところだ。 まるでLINEが来るのを知っていたかのような滝山君の返信の早さに、私は、滝山君も、“あわよくば…”組で、投票とかめんど臭くてサボってて、スマホを持って待っていたのだと睨んでいる。 で。 私は… 事前の情報収集により、コント派が優勢と睨んで、反対のミュージカルに投票してしまッた… どこで票を読み間違えた? 事前のリサーチに誤りがあった? 所詮、陰キャの私には、クラスの仲間と親しくしながらの情報収集なんて、超苦手分野だ。 教科書に向き合って、数式と仲良くしてる方がはるかに楽しい。 「じゃあ、今日はもう時間もないので、一旦ホームルームは終わります。 あ、残れる人は残って! 決めれるとこだけパッと決めちゃいましょう」 陽気キャの代表、クラス委員の安城さんがそう告げて、ホームルームは終わり、そのまま終礼を経て、放課後になった。 ミュージカル派もコント派も無くなったクラスカースト上位のメンバーは、早速机をくっつけて大きなテーブル状に並び替え、打ち合わせを始めた。 その陽気キャのメンバーの中に、意外な人物がいるのに、私は気がついた。 野球部のエースだった藤縄健(ふじなわ たける)君だ。 (ああ、そうか。野球部も部活終わっちゃったもんね) 今まで彼がこういう集まりに参加しているところを見たことはなかった。 そりゃそうだ。 部活が忙しかったんだから。
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