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その日の夜。
永瀬は、うとうとする昂平を、いつものように腕の中に抱き込んで、ふわりとシャンプーの匂いのする頭に鼻先をくっつけた。
「昂平君」
朝が早い昂平は、永瀬が求めなければ、夜も早く寝る。
「ん……?」
眠そうな声が返ってきた。
永瀬は、そのパジャマの合わせから手を滑り込ませる。
「明日はジョギング休まない…?」
これは平日の誘い文句だ。
「ん…今日、眠い」
昂平は、少し身体を捩った。
肌に触れる永瀬の指が、そっと彼の胸の突起に触れたからだ。
「昂平君に触りたい」
ゆるく円を描くように、ただ、そこを指先で撫で続ける。
「君は眠っててもいいから」
指の動きは止めないまま、耳裏の柔らかい部分に唇を寄せた。
少し強めに吸い付く。
「…んっ」
昂平が、ぴくんと震えた。
「永瀬、そんなとこ、痕つけんなよ…っ」
意図して痕をつけたことを気づかれて、抗議される。
が、その抗議が終わらないうちに、胸元を弄っていた指にキュッとそこをつねられて、思わず零れた吐息が熱を帯びてきていた。
「大丈夫、こんなとこ、誰にも気づかれないよ…うんと近くに寄らないと見えないから」
柔らかい永瀬の声は、いつもと同じようで少し違う。
昂平を抱いているとき、彼の声には普段には全くない艶がこもる。
「ね、昂平君、今日、してもいい?」
許可を求めながら、指はどんどん昂平を追い込んでいく。
ぷくりと浮き上がってきた突起を、捏ねるように弄り続ける傍ら、もう片方の手で、パジャマのボタンを外し始めた。
「明日…もう、金曜、だろ……」
だから、明日じゃダメなのか?
そう言いたいのであろう昂平の、遠回しな「今日はしたくない」という主張を、永瀬は快楽で押し流すことにする。
ボタンが全部外されて、はだけた胸に唇を落とす。
指で弄られていないほうの尖りをペロリと舐められて、ビクッと背中が震えた。
「ながせ…今日は、や、だ…」
今日見た図書館での、永瀬とゼミ生の姿がまだ胸の内で燻っている。
このまま抱かれてしまったら、その熱を失いたくなくて、心の内の醜い嫉妬をさらけ出してしまいそうで怖かった。
一晩でいいから、もう少し頭を冷やす時間が欲しい。
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