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昂平の姿が扉の向こうに消えると、早川は挑発するような瞳で永瀬を見る。 「牽制してんのかもしれないですけど、逆効果ですよ、先生。昂平ってあんなデレ顔するんすね、すげぇ萌える」 永瀬は、ふんわりと微笑んだ。 「僕も、彼のあの恥じらう顔が堪らなく好きなんだよね」 柔らかい口調なのに、やっぱり、何か薄ら寒いものを感じる。 「昂平君は、ベッドの中ではもっと可愛いよ?」 昨夜そのひとが見せた痴態を思い出したかのようにうっとりと彼は言って、どこかゾッとするほど艶かしい瞳で早川を見た。 「君にはあげない…僕だって、ようやく手に入れたんだから」 あれだけ図々しく図太い神経の持ち主の早川が、思わず凍りつくような凄烈で艶麗な視線。 魔性の妖艶さと苛烈な冷酷さでもって、どんな聖人をも堕落させる、人ならざるもののような。 「昂平君に手を出そうとしたら、どうなるか教えて欲しい?」 ペロリと永瀬は唇を舐めた。 誘うような、艶かしい動き。 早川は、元々永瀬目当てであったはずなのに。 その悪魔のような蠱惑に満ちた仕草を、何故か恐ろしいと感じる。 恐ろしいほどの、艶かしさ。 あれほど傍若無人だった早川が、思わず後退った。 「僕は、彼を失わないためなら、どんなことでもするから、覚えておいたほうがいい」
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