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授業が終わるや否や、早川にまとわりつかれて、昂平は本気で鬱陶しくて苛々した。 早川の声はオールシャットアウトして、さっさと帰り支度をし、外に出る。 永瀬の愛車がそこにちゃんと止まっていることに、心から安堵した。 後ろからついてくるその煩い男が「何で来てるの?自転車?俺の車で送ってやるよ」などとほざいているのをガン無視して、真っ直ぐその車に向かう。 永瀬はすぐに昂平の後ろからくる早川に気づいたようだ。 運転席から降りてきて、昂平を庇うように一歩前に出る。 「昂平君、おかえり」 そして、何故ここにいるのか、と早川を冷ややかに睨む。 永瀬にしては、珍しい表情だ。 当然、早川も永瀬に気づいた。 チッと小さく舌打ちする。 「お迎えかよ…ホント隙がねぇな」 そして、肩を竦めた。 「今日から同僚なんですよ、昂平と俺」 指導教官だからって、バイト先まで先生には指図できませんよね? 永瀬は数秒、無言で自分のゼミの学生を見つめていた。 その瞳には何の感情も浮かんでいなく、凪いだ湖の表面のような静けさだけがある。 そして、早川の言葉には何も言葉を返さず、フイと視線を反らして、昂平に車に乗るよう促した。 「帰ろう、昂平君」 「じゃあ、またな、堀越センセイ」 早川のわざとらしい呼びかけも、二人は完全に無視した。 車の中、昂平は、永瀬にあまり心配はかけたくなかったものの、あまりにもストーカーちっくな早川の行動を報告せずにはいられなかった。 正直、少し怖い。 守りたい相手のためになら、自分を犠牲にしてでも守ることができると思う。 でも、狙われているのが自分だとなると、どうやって守ればいいのかわからない。 それに、自分が狙われていると思うと、どうしても以前、永瀬の熱狂的信者みたいな輩から襲われたことが記憶に甦ってきてしまう。 永瀬には身体にいくら触れられても、少しも思い出すことがなかったのに。 永瀬は彼に似合わない険しい顔で、昂平の話を聞いていた。 マンションに着いて車を駐車場に止めると、彼は、ポンポンと昂平の頭を撫でる。 「少しだけ、我慢してくれる?君には指一本触れさせないようにするから」
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