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ベッドの中で、明日はジョギング休むから、と自分から言ったのは初めてだった。 それはつまり、抱いて欲しいという意思表示だ。 永瀬は一瞬びっくりしたように目を丸くして、それから、全てわかっているように優しく微笑んだ。 永瀬の温かい腕に抱かれることで、その熱と一つに溶け合う行為をすることで、自分の身に迫る何かに対する不安を掻き消したかったのだ。 「昂平君、可愛い」 君から誘ってくれるなんて、ホントに本当に嬉しい。 熱のこもった声で耳許に囁かれて、昂平はとん、と永瀬の胸を拳で軽く殴る。 そんな恥ずかしいこと口にするな、という抗議だが。 「そんなふうに恥ずかしがるとこも可愛い」 大好きだよ、僕の昂平君。 甘い囁きは止まることがない。 その長く綺麗な指先が、囁きの合間にあっという間に昂平の着ているものを脱がせていく。 永瀬に触れられても、やっぱりあの嫌な記憶は全然甦らない。 怖くもならないし不安もない。 ただ、その肌がくれる温もりに安心して、気持ちよさに全部を委ねれば、そのひとを好きだと身体全体で感じられるだけ。 永瀬の丁寧な丁寧な愛撫を身体の隅々まで感じさせられて、彼は息を乱していく。 そうして触れて貰うだけで、不安が全部どこかにいってしまいそうだ。 そう、あの早川とかいう変な男のストーカー的な執着が、永瀬に向かなかったことは、もしかしたらまだマシだったのかもしれない。 永瀬があの男の標的になっていて、四六時中研究室で一緒にいると思うと、それだけで気が気じゃなかっただろう。 それぐらいなら、まだ、自分が標的になったほうが我慢できる。
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