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口にはそうとはっきり出さなかったけれども、昂平が早川の行動を怖がっているのがひしひしと伝わってきた。 自分から誘うなんて、昂平がそんなことをするようになるのは、もっとずっと先だと思っていたのだ。 そうまでして、不安を忘れたかったということだ。 自分のゼミの学生だから、一度は警告で済ませておいてやったというのに。 その警告を無視した上、昂平を怖がらせるなんて絶対に赦さない。 永瀬は、いつものことながら、感じ過ぎてほとんど意識を飛ばすようにして眠りについた昂平の髪の毛をそっと指で透くように撫でた。 黒いさらさらのその髪は、今は汗ばんでしっとりしている。 髪を透く手を、頬に移す。 感極まって零した涙の跡が筋を作って残っている。 伏せられた睫毛にはまだその涙の名残も残っていて、泣きながら眠ってしまった小さな子どものようにも見えた。 頬に触れた永瀬の手に、眠っているのに無意識に擦り寄せるような仕草を見せるのが、本当に愛しい。 このひとを、誰にも渡さないし、傷つけさせたりしない。 彼だけの、昂平だ。 永瀬は、誰にも見られることのない深夜の寝室で、ゾッとするほど冷酷な顔を覗かせる。 あの、なんでも自分の思い通りになると思い込んでいるらしい図々しくも世間知らずのお子様を、どう料理してくれようか。 世の中には手を出してはいけないものというものが、確かに存在するということを教えてあげるのが大人の務めというものだ。
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