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早川が塾を辞めた、と塾長のぼやきを聞いたのは、それから2週間もたたないうちだった。 「堀越先生の知り合いっぽかったから、きちんとしてると思ったんだけどなぁ」 君は本当にきちんとしていて、生徒からも保護者からも受けがいいしね。 永瀬が何かしたのだ、ということは、すぐに思った。 そもそも、初めて塾で顔を合わせて、ストーカー的に個人情報を調査していたことを知ったあの日から、ほとんど早川とは顔を合わせることがなかった。 あんなに執着を見せていたのに拍子抜けするぐらいだったけれど、逆に姿を見せないからこそ、何かよからぬ企みでもしているのか、と常に身構えてはいたのだが。 永瀬にそれとなく、あの人どうしたの?と聞いたら、にっこり微笑んで「なんだか学校辞めたみたいだよ?」と言うばかりで、何故そうなったのかは教えてくれなかった。 以前、昂平を襲った先輩たちも、そういえば。いつの間にか学校から姿を消していた。 あのときも、永瀬はにっこり微笑んで結果だけを教えてくれて、過程を昂平は未だに知らないままだ。 一介の准教授にすぎない永瀬が、一体どんな手段でそんなことができるのか、気になるところではあるが。 とりあえず、目の前の平穏に安堵して、どうでもいいか、と思ってしまう自分は、案外大雑把な性格だったのだろうか。
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