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「本日は九月の五日です。暦は今月下旬に入荷の予定です」
私は暦さん専用のテンプレートに日付を当て嵌めて返す。
「そう。そしたらまた来るわ」
暦さんはもう用はないと言うようにくるりと背を向けると、アクリルの書棚を通過し防犯ゲートを潜っていく。
「ありがとうございました」
機械的な声に反応が返ってきたことも一度としてない。
店長も先輩スタッフも暦さんのことは知らなかったので、私がアルバイトを始めるのと暦さんの来店はほぼ同時期だったと推測している。
年齢で言えば暦さんは私の祖母と同じ位ではないだろうか。
尤も祖母は慣れた土地から離れたくないと父母との同居を拒み、一人で暮らしているから記憶の映像は更新されていないのだけれど。
見た目は普通でも、その行動は引かれた線から明らかに蛇行している。
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