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「ボケちゃってるのかな…」
水に油を落としたようだ。
呟いた独り言は溶けて馴染んでくれず、後ろめたさが胸を掠める。
だって、でも。
言い訳をするように小さく首を振る。
歳を重ねれば重ねるほど人間としての機能は衰える。歩幅の合わない存在は徐々に疎まれ始めるだろう。それが他人事じゃないことも分かっている。
私だっていつか結婚して、子供を産んで、その子供が孫を産んで…。
私が主役の時間は思っているより長くない。
暦さんは、どうだろうか?
今はもう、主役じゃない?
何を思って、何を考えている?
アクリルの書棚の向こう側に目を向ける。
ヒントは何処にも落ちていなかった。
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