第5章 12月28日

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15:35。 マユはシートベルトを外しながら、腕時計を見た。時計もスマホもそのままだ。 タラップを降りてから、スマホの電源を入れる。 自動的に現地の時間に補正される。 スーツケースをピックアップし、手続きを終えて、白いゲートを見つめる。 ここを抜ければケンジが待っている。 年末の横浜に比べて天国のように暖かい。 ノースリーブでも良かったかも。でも、紫外線が強いらしいから。 南国の風が鼻孔に届く。 そして懐かしい匂いも。 私があげた香水の匂い。 逆光の中、ケンジが手を差し伸べる。 ここはグアムだ。 日本から時差1時間の場所。 2人の時間は今一つに戻った。 どっちの時間軸か分からないし、それが正しい時間軸なのかも分からなかったが、そんなことはどうでも良かった。 2人はずっと抱き合っていた。
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