第2章 クリスマス

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聞き覚えのある着メロが取調室に流れた。 マユがケンジ用に設定したラブソング。 だが、携帯は田辺の手にあった。 ディスプレイには「ケンジ」の文字。 こちらからかける前に電話がかかってきた。 どういうことだ? 田辺はマユの顔を覗き込んだ。 マユは着メロで相手がケンジだと分かっている。 視線で出るように促す。 田辺は唾を呑み、通話ボタンを押した。 「もしもし、こちらは伊勢崎マユさんの電話です。葉山ケンジさんですか?」 「こちらは葉山ケンジさんの携帯ですが、どなたですか?」 「神奈川県警戸塚署刑事課田辺と申します」 田辺はスピーカーから流れる自分の声に驚き、ディスプレイの表示を確認した。 そして目の前の容疑者を見た。馬鹿な。 「おい、お前は本当に俺か?一体今何時なんだ?」 2人の田辺は今置かれた状況を肌で理解した。 そして、もう1人の自分の返答を確認しあって、通話先と1時間の時差があることを悟った。 なんてことだ!こんな調書が書けるか! こっちが電波系になってしまう。
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