第2章 クリスマス

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ケンジとマユはそれぞれ、田辺が下した判断で釈放された。 つまり、証拠不十分。 あとは事件性なしで処分する為にも2人に合流してもらうしかない。 田辺が干渉した事により、状況は変化していった。 次第にシンクロしてきたのだ。 時差は相変わらず、1時間あったが。 ケンジとマユは一旦ケンジのマンションに帰った。 いつものように過ごすと、変化に気付いた。 マユが動かしたカップがケンジの世界でもいつの間にか動いている。 第三者が関わった事で歪みが生じたのかも知れない。 だが、喜んでばかりはいられない。 良い方向へ動くとは限らないのだ。 世の中は円形または球体によって支配されている。 地球も丸いし、水面に浮かぶ波紋も円形だ。 円は中心から奥へと進んでいく。 ケンジという中心円からの影響が(わず)かに1度ずれただけでも、マユの所では何度ずれているか分からない。 時間の流れ。 良い流れに乗るなら機を逃してはいけない。 湘南でのサーフィンと同じだ。 良い流れに乗るタイミングを見極めなければ。 二度と同じ波は来ないのだから。 時間軸がずれた同じ部屋で恋人達は物理的な合図を送りあう。 食器の位置。 明日のデートで着る洋服のコーディネート。 風呂上りにソファの上を見ると、マユが用意してくれた洋服があるのだ。 2人はまた愛を深めあうが、抱き合う事は出来ないでいた。
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