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01 気がつくと知らない場所
雷がゴロゴロとなる。山のなか。夜の帳が降りてきた。
鬱蒼とした森のなかを彷徨っていた。完全に迷子だった。
だけどふと、そうそれは何かに蹴躓いてから辺りの様子が変わっていた。そこは森のなかではなく、ごつごつとした岩肌の地面のうえを歩いていた。完全な暗闇のなかで何も見えなかった。
木々も見えない。手に触れることもできない。森はどこへ消えてしまったのか? そして空を見上げると星や月すらもなくなっていた。
ふとそこに何かの音が聞こえてきた。それは何かバサバサとした音。傘が強風で煽られている時のような、そんな音だった。だがここには風はない。そして地面をひたひたと足音を立てて近付くもの。
彼は恐怖した。気がつくと知らない場所にいたうえに、なにか得体の知れないものが近づいてくる。
逃げた。暗闇のなか。うまく走れない。どんなに目を凝らしても濃密な闇が広がるばかりでなにも見えない。ただおぼつかない足取りで逃げる。だがごつごつとした平らではない岩肌が足をもつれさせてうまくは歩けない。
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