純粋に、狂っているだけ。

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 (かける)の通う大学の建築学科の男女比率は、圧倒的に男性が多かった。大学によっては男女の比率がさほど変わらないところもあるのに、いざ入学してみれば、男子学生が全体の七割を占めていた。  男女比率を気にかけて、この大学を選んだわけではない。けれど、(かける)にとってこの環境は、正直有難かった。  自分は女性に人気がある。嫌味でもなんでもなく、中学時代から身を以て実感している、ただの事実だ。集中して勉学に励みたい(かける)にとって、女性の視線が少ないことは、正直喜ばしいことだった。  かと言って、好奇の視線をまったく感じないわけではない。入学当初から、同性からであろうと異性からであろうと、まるで無数の針を刺されているかのように感じていた。そこには、憧憬(しょうけい)羨望(せんぼう)、それに、嫉妬(しっと)のような負の感情も入り混じっている。モデルという華やかな仕事をさせてもらっているのだから、それも致し方ない。  中学生の頃から、本人の意思とは関係なく注目を集めていた(かける)にとって、蜘蛛の糸のように複雑に絡んでくる視線は、もはや日常でもあった。
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