初恋に、賞味期限はありますか。

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 休日の、ショッピングモールのフードコートに似ている。大学のカフェテリアを初めて見た時、さくらはそう思った。一人きりで座っている者は少ない。大抵のテーブルでは、似たような服装をしている者同士が、家族連れのように群れを成していた。  入学からわずか二ヶ月。新入生同士でも、すでに〈グループ〉ができている。集っている人たちの雰囲気がちぐはぐなグループは、おそらく一年生なのだろう。たまたま講義で席が隣同士だったとか、相手も一人だったとか。そんな理由でとりあえずグループを組んでいる、いわば、仲良しグループ(仮)といったところだ。  隣のテーブルでは、四人組の女子学生たちが、一冊の雑誌を広げていた。四人のファッションやメイクの系統が似通っていて、二年生以上の学生だろうと分かる。雑誌の表紙は、全体的に色味が黒っぽく、女性向けではないように思えた。  四人組に気付かれないよう、さくらは目を凝らして、それを盗み見た。  すると、四人のうちの一人が、表紙が見える位置まで雑誌を持ち上げる。案の定、それはメンズファッション誌だった。雑誌名も、ゴシック体で力強く表記されている。表紙を飾る二人のモデルは、どちらも男性だった。そして、二人のうち右側に映っているモデルは、さくらがよく知る人物だ。  思わず身が乗り出る。それと同時に、数メートル先から自分を呼ぶ声が聞こえた。
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