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『ありがとう。今家族でお寿司食べに来てたんだ。ごめんね。誘ってくれてありがとう』
続けて、
『卒業、おめでとう』
そうメッセージが来た。
さくらもおめでとう――そう返して、最後になった。
高校卒業と同時に、さくらに告白する。高校二年の時、翔はそう心に決めた。
けれど、さくらとの距離感を考えると、どう見積もっても成功率は低い。翔は泣く泣く、そのタイミングを見送った。
告白する人はよく〈フラれても、伝えることに意義がある〉と言う。けれど、自分にその考えは微塵もない。
なんとしてでも、さくらの〈恋人〉に収まりたい。あの小さな手を握る権利が欲しい。友だちにも、ただの幼馴染にも、もう満足できる気がしなかった。
人の心を計算するのは苦手だ。けれど、蔑まれてもいい。打算的にいってでも、さくらが欲しい。
卒業パーティーからの帰り道、翔は陸にそう打ち明けた。
陸は、あきれたように笑って、お前やっぱ怖えよ、と、言った。
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