1466人が本棚に入れています
本棚に追加
「三冊も買ってどうするの」
「そりゃあ、保存用、観賞用、実用用でしょう」
「……実用用ってなに」
「翔くん、引っ越しちゃったから、寂しいわねえ。一人暮らしなんて、心配だわ。ちゃんとご飯食べてるのかしら」
「……着替えてくるね」
こうなると、母の話は長くなる。さくらは無理やり会話を切り上げて、台所を出た。
階段を上がって、自室の扉を開ける。部屋に入ると、さくらは着替えるより先に、A4サイズも楽々入るバッグの中身を漁った。
中から、書店名が印字されたビニール袋を取り出す。部屋には自分以外の誰もいないのに、さくらはこそこそと背を丸めて、ビニール袋に貼られたセロファンテープを剥がした。
袋の中から、先ほど買ったばかりの雑誌を取り出す。その表紙を見て、さくらは思わず、ほう、と感嘆のため息をついた。
「かっこいい……」
意思に関係なく緩む口元を引き締めてから、さくらは一ページ一ページ、ページを丁寧にめくった。
翔は、最初の方のページを数ページ、飾っている。所属しているモデル事務所が割と大手なのか、他のモデルよりも、中心にいることが多い。いや、もちろん、翔の魅力がそうさせていることが、大半の理由だろう。
最初のコメントを投稿しよう!