初恋に、賞味期限はありますか。

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「三冊も買ってどうするの」 「そりゃあ、保存用、観賞用、実用用でしょう」 「……実用用ってなに」 「(かける)くん、引っ越しちゃったから、寂しいわねえ。一人暮らしなんて、心配だわ。ちゃんとご飯食べてるのかしら」 「……着替えてくるね」  こうなると、母の話は長くなる。さくらは無理やり会話を切り上げて、台所を出た。  階段を上がって、自室の扉を開ける。部屋に入ると、さくらは着替えるより先に、A4サイズも楽々入るバッグの中身を漁った。  中から、書店名が印字されたビニール袋を取り出す。部屋には自分以外の誰もいないのに、さくらはこそこそと背を丸めて、ビニール袋に貼られたセロファンテープを剥がした。  袋の中から、先ほど買ったばかりの雑誌を取り出す。その表紙を見て、さくらは思わず、ほう、と感嘆のため息をついた。 「かっこいい……」  意思に関係なく緩む口元を引き締めてから、さくらは一ページ一ページ、ページを丁寧にめくった。  (かける)は、最初の方のページを数ページ、飾っている。所属しているモデル事務所が割と大手なのか、他のモデルよりも、中心にいることが多い。いや、もちろん、(かける)の魅力がそうさせていることが、大半の理由だろう。
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