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それは七年前に遡る。
当時、高校生だった私は、その日、悪夢を見た。
友達の加奈が、踏切で電車に跳ねられてしまう夢だった。
私は、大声を上げてベッドから跳び起きた。
身体中、ビッショリ汗で濡れていた。大きく肩で息をしていた。
その夢のシーンは余りにもリアルで、跳ねられた加奈の身体が線路に投げ出され、車輪で切断され肉片になる様子が鮮明に表現されていた。
私は、ベッドの上で大きく息をして、呼吸を整えた。
「何て夢を見るんだろう・・」
と呟いて、大きく頭を振った。
そして身支度を整えると、朝食を食べ学校に向かった。
早く加奈に会いたかった。
しかし、加奈はその日、学校に現れなかった。
私は少し不安を感じつつも、体調でも悪いのかなって思いながら一時間目の授業を受けた。
二時間目の授業が始まる前に、担任が教室にやって来た。
「皆さんに残念なお知らせがあります。今朝の通学途上で田中加奈さんが踏切で電車に轢かれ、亡くなりました。詳細はまだ分かってませんが、先生はこれから田中さんの自宅に行ってきます・・」
私は自分の席で立ち上がり、そのまま呆然と立ち尽くした。
それから、その様な夢を見る事も無く、私の周りで人が亡くなる事も無かった。
それで私は、加奈の事件はただの偶然だったと思う様になっていた。
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