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それは、加奈の事件から一年半程経った日だった。
今度は父が通勤電車の脱線で亡くなる夢を見た。
私は、あの時と同じ様に飛び起きた。また汗で身体がビッショリだった。
私は頭を大きく振って、気を取り直すと、身体を拭いて最低限の身支度をした。
そして階下に駆け降りた。
廊下からリビングを振り返って、台所に立っていた母に聞いた。
「父さんは?」
「十分くらい前に会社に出かけたわよ。いつもの時間だけど、どうしたの?」
私は母に何も言えなくて、首を振りながら応えた。
「私も、もう学校に行くから。今日は朝御飯要らない」
そう言うと廊下を走って玄関で靴を履いた。
そして全力疾走で駅に向かった。
最寄りの駅までは歩いて十分程の距離だった。
携帯で父に電話を掛ける。
(父さん、出て!!)
私は願った。三回目のコールで父が出た。
「父さん!!」
「ごめん、綾。今、電車に乗ったんだ。電車降りたら掛け直すから切るぞ」
「ちょっと、父さん待って、電車に乗らないで!!」
電話が切られた。残念ながら、叫んだ私の声は父には届かなかった。
走りながらラインのメッセージを送る。
『その電車、脱線するかもしれないから直ぐ降りて!!』
父から返信が来る。
『何言っているんだ? 夢でも見ているのか?』
『そうじゃないの。とにかく降りて』
『でも、快速特急だから終点の新宿まで停まらないぞ・・』
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