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そして、次の事件は三年前起こった。
父が亡くなった後、私は母と二人で暮らしていた。
既に、俊輔とは付き合っていたが、まだ同棲はしていなかった。
その日は日曜日だった。
私はまた夢を見た。
今度は、母が武蔵小杉行きのバスで事故に遭い亡くなる夢だった。
また飛び起きる。
急いで階下に降りると、母が出かける準備をして玄関で靴を履いている所だった。
「母さん待って。何処に行くの?」
母が振り返りニッコリと笑った。
「お友達と川崎で映画を見て、お昼を食べてくるわ。貴方も今日は俊輔君とデートでしょう? お互い楽しみましょうね」
私は息を整えながら母に聞いた。
「母さん。どうやって川崎に行くの? 電車?」
「お友達が武蔵小杉に住んでいるから、武蔵小杉までバスで行って、そこから電車の予定よ」
私は母の肩を掴んで力を込めた。
「どうしたの綾。肩、痛いわよ」
「母さん、待って。私が車で武蔵小杉まで送るから、バスに乗らないで!」
母はキョトンとしていたが、大きく首を振った。
「でもバスで行くわ。貴方、デートの準備があるんでしょ?」
私は真剣な顔で母を見つめた。
「とにかく私の言うことを聞いて、お願い」
母は仕方ないわねという顔をした。
「分かったわ。理由は分らないけど、そんなに泣く程の事なら、言う事聞くわよ」
私の眼からは、いつの間にか大粒の涙が流れていた。
その後、私は自宅の車で母を武蔵小杉まで送った。
この時、私は運転免許を取っていて本当に良かったと思った。
南武線武蔵小杉の駅前で母を降ろすと、直ぐに母はお友達と会えた様だ。
母が手を降っている。
友達と改札を抜けた母を見て、私は安心して自宅に戻った。
もちろん俊輔とのデートの時間には遅れてしまったけど、私は本当に胸を撫で下した。
だって、初めて予知夢の結果をひっくり返す事が出来たのだから。
これで母は安全だ。
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