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それはその日の夕方だった。
俊輔と渋谷の映画館を出て、夕食のレストランへ向かっていた。
私の携帯に知らない番号から着信があった。
私は首を傾げながら電話を取った。
「はい、小島ですが」
「こちらは川崎警察署です。お母様がバスで事故に遭いました。直ぐに川崎総合病院迄来て頂けますか」
その瞬間、私は持っていた携帯を手から落としてしまった。
その場で呆然としている私に俊輔が声を掛ける。
「どうしたんだ? 綾?」
俊輔は私の携帯を拾いながら問いかけた。
「あー、スクリーン割れてるぞ、気をつけ・・」
大きな涙を眼に浮かべ、泣き出した私に俊輔は驚いた様に私を見つめる。
「お母さんがバスの事故で・・」
私はそう言うのが精一杯だった。
私は俊輔とタクシーで川崎総合病院に向かった。
私は祈った。少なくとも予知夢で見た事故は最寄りの駅から武蔵小杉行きのバスだった。
母が事故に遭ったバスはそれとは確実に違う筈だ。
(だから結果は予知夢とは違う筈)
でも、その祈りはまったく天には届かなかった。
私は病院の霊安室で母の遺体と対面する事になる。
私は二一歳で、両親を亡くし天涯孤独となった。
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