キューピットの矢

4/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「なんか、そんな男を紹介した自分が許せないし、親友にも申し訳なくてさ。「好き」って何?二週間で心変わり出来てしまうものなら、そんな「好き」要らないわぁ」 「そうだねぇ」 田口さんが取り持とうとした、キューピットの矢は存外早く抜けて、違うところへ飛んでった。 キューピットの矢は、やはり武器のひとつなんだろう。 田口さんの「好き」を分からなくさせ、自分に向かう矢を拒絶させるくらい力がある。 田口さんが潰していたグミを私は手に取った。 「私にとってさ、この固めのグミって三ヶ月に一度食べれば十分なんだよね。それで、この小さめのつぶつぶのグミは昔はまって好きで、ずっと食べ続けてたけど今はあんまり興味がないんだよね。それで、この王道の果汁を感じられるグミは一生食べていけるっていうか。もはやご飯のような存在で…」 「グミなのにご飯…」 田口さんが耐えきれず一回突っ込んできた 。 「でも、この前アメリカからやって来たグレープフルーツ味のグミに出会って衝撃を受けたわけ!このグミはもしかすると私にとってパンになるかもしれないってさ。好きにも色々あるんだなぁってさ。」 「それだと、めっちゃ浮気性みたいなんだけど。」 「あっほんとだ!あの何て言ったらいいか…」 「ははは、でもそれ!そうゆうことだわ。 好きです。に説明がほしいんだわ。王道の果汁感じるグミぐらい好きなのか。口寂しいから固めのグミぐらいの好きだけど、付き合ってなのか。」 「まぁ田口さんの場合は納豆だよね。」 「まぁね、粘りがあって、しつこいくらい、ちゃんと好きを感じられるひきわり男子!!」 「いいね、ひきわり男子!」 松石、もしお前がひきわり男子ならもう一度告白するべきだ。 今度は面と向かって、一人で堂々と。 私は牛乳と田口さんに軽くプッシュされていたグミと王道のグミをかって店を出た。 田口さんは納豆と卵を買っていた。 田口さんとは家の方向が逆だからここでさよならだ。 「おやすみなさい、田口さん。私の好きを受け取って。」 王道のグミを田口さんに向かって投げた。 田口さんは片手でキャッチする。 「あはは、オッケー。ありがとう。この好きならいつでも貰うよ。私も結構グミ好きだから!」 私達はこれがきっかけで、新作のグミを食べ会う会。通称「グミン」を結成するのだった。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加