その時が過ぎるのを

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 突然キュッ、と喉の奥辺りで音がする。  それが鳴ると、死にたくて死にたくて仕方がない。そんな思考に取り残されてしまう。  それは突然やって来る。  テレビを見ていて。風呂から上がって。遊びに出ていて。食事をしていて。布団に入ろうとして。  防ぐことも紛らわせることも出来ずに、ただただその時が過ぎるのをじっと待つ。待つしかない。  何も、特別なことではないのだ。  幼少からその音は聞こえていた。  何だか泣きたい気持ちにはなるが、吐き気を催して胃がムカムカとするが、それで済む。  じっとその場にうずくまって、自分を踏み留まらせればいいだけだ。じっと待つ。動けずに待つ。  今日もまた、キュッ、と音が鳴る。  胸が締め上げられていく。  何も怖くない。いやそんなはずはない。  死には痛みがある。必死で己を留まらせる。  死にたい。  こんな世の中から、こんな自分からさよならしたい。捨てたい。この先のことや、将来のことや、誰かのことなど考えたくない。何もかもがしがらみで、鬱陶しくて、しんどいものだ。  そして誰にも理解されない。独りきりで、この衝動に耐えている。  消えたい。  温かい飲み物でも淹れて来よう。  
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