望んだものはただ、ひとつ

20/22
493人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
 この世界に散らばる様々な国に、男の王妃がいないわけではない。内乱を避けるために王妃は男だと決められている国が少数ではあるが存在していることも、宰相補佐であったシェリダンは当然知っている。別に否定も差別もしようとは思わない。しかし自分がその立場になるというなら話は別だった。  このオルシア大国において水晶の儀は絶対。しかしまだ同性婚が庶民には認められていない国で男の王妃など表立って文句を言うものはいないかもしれないが、それでも認められるかどうかは別だ。まして後宮に住まう側妃達は大半が外国の娘達だ。尚更男の王妃など認められるわけがない。毎日謗りや嘲りを受けることに、果たして自分は耐えられるのだろうかとシェリダンは思う。それ以前に、今目前に迫っている危機さえも乗り越えられる自信はない。線が細く、女のような顔をしていてもシェリダンは男。その男の身が同じ男に組み伏せられ、屈辱を強いられるなど耐えられない。 シェリダンは王を嫌ってはいない。むしろその類稀なる才能を惜しみなく発揮して国を導くその姿に忠誠心さえも抱いている。しかしその彼にならば女のように扱われても平気かと訊かれればそれは否だ。男としてのプライドもある。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!