望んだものはただ、ひとつ

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 アルフレッドは大国オルシアの国王。賢く強く温和な美しい王。そして彼には現在進行形で伴侶……つまり王妃がいない。そうなればオルシアと親交を深めたい国々は挙ってアルフレッドに年頃の乙女を差し出すのだ。今は側妃の立場であったとしてもアルフレッドに見初められる日が来るかもしれないし、幸いに子を成せば、その子が男の子であったら自らは王妃に、そして子を次期国王、そしてゆくゆくは国母にもなれるだろう。なによりアルフレッドは見目が良い。政略結婚させられる女達はむしろ喜んでオルシアに嫁いでくる。  しかし、アルフレッドは未だに王妃を決めない。一応の決まりとして嫁いできた女の初夜は行うが、それ以降彼が夜に後宮を訪れることはない。それゆえ、実は王は男色で女に興味がないのでは? と考えた者達が見目麗しい男を王に引き合わせてみたが、彼は何の興味も引かれず、むしろ男であるなら初夜をする義務もないとばかりに手を付けようとしなかった。とてつもなく淡泊な王は初夜で身籠った側妃の子供に二人男児がいるのだから跡取り問題は解決したとばかりに王妃問題からのらりくらりと逃げている。結局王子を産んだからと言ってその側妃を王妃にしてしまえば、必ず側妃の国が大きな顔をするのは目に見えているし、それはどの国でも変わりない。それじゃあオルレアの女を王妃にしたらよいではないかとも思うが、その女は必ず貴族であり、やはり親元の貴族が大きな顔をするし、他の貴族は対面に泥を塗られたと憤るだろう。なら平民ではどうかと言われれば、それはそれでまた貴族の対面がどうのと煩い。 王妃の生んだ子はどれ程幼かったとしても王位継承権第一位となる。その取り決めがある以上、誰を王妃にしたところで角が立ち、誰かが大きな顔をする。それほどまでにオルシアという国は強大で魅力的なのだ。 アルフレッドが王妃を決めないことを良いことに、国や貴族達が一人に限らず幾人も乙女を送り込んでくる。国であれば最初は貴族の娘を、駄目なら王族の娘を。貴族なら最初は直系女児を、駄目なら妾の子であっても良い、と。そんなことが続き、とうとう昨日嫁いできた隣国の皇女でアルフレッドの後宮に住まう側妃の数は五十に到達してしまったのだ。
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