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霞の白騎士
「これより『徴収』を行う」
月の光が無機質な金属の鎧を映し出し、先頭に立つ騎士が傲慢に言い放つ。
何が『徴収』だ。やっていることは野盗と同じ略奪じゃないか。
だが、野盗と一つ大きな違いがある。
それは「野盗より騎士の方が圧倒的に強い」という事実だ。
クガート鋼製の鎧に身を包んだ騎士達には、そこらの傭兵ではまるで歯が立たない。
現に戦闘が始まると、私たちの商人隊の腕に覚えがある者と、雇った護衛の傭兵達は蹴散らされ、僅かな時間で制圧されてしまった。
「あなた達、仮にも騎士だと言うのなら、こんなことをして恥ずかしくないの!?」
怪我人や私より若い女の子を守るように前に出て、精一杯の力で叫んだ。
「威勢の良いお嬢さんだ。お前のような気の強い娘は嫌いじゃない」
クククと、騎士団の長らしき男が兜の下で笑う。
「恨むなら、俺たちに仕事を与えない国を恨むんだな」
何を勝手な事を。
仕事がないのはお前達が無能で高給取りだからじゃないか。
魔界大戦から百年。
戦争で活躍した騎士という職業は年々人口を増していた。また高い装備のコストも雇用費の高騰に拍車をかけ、今では完全に需要と供給が釣り合っていない。
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