霞の白騎士

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 そうして近年、国軍や有能な騎士団以外は仕事にあぶれ、別の職への転職が相次いでいた。  だが転職に踏み切れる騎士はまだ有能で、騎士という肩書きに固執する無能な奴らは『徴収』などという大義名分を掲げ、野盗紛いに堕ちて生きながらえていた。 「器量も良いな。そいつを連れて行け」  指示を受けた手下らしき騎士が私に近づいてくる。 「なんせ男所帯なのでな、世話(・・)が出来る女が必要だ」  腕を強い力で掴まれ、立ち上がらせようとされる。  あぁ、こんなところで私の純潔は散ってしまうのか。それでも命があるだけ儲けもの?  どこか他人事のように考えていた。が、その時。 「……えっ?」  突然のことに、何が起こったのか解らなかった。  ただ、私の腕を掴んでいる騎士の胸から、なにか鋭い刃物が突き出ていることだけ理解できた。  辺りが静寂に包まれる中、ゆっくりと刃物は引き抜かれ、騎士は胸に開いた穴から大量の血を零しながら地面に倒れた。  倒れた騎士の背後に、刃の持ち主は立っていた。  月光で輝く白い鎧に蒼い外套、右手には月の光を吸ように光る刃毀れ一つ無いロングソード。左手に持つカイトシールドには天秤の紋章が描かれている。バイザーを下ろしたフルフェイスの兜からは、一切の感情が読み取れない。     
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