霞の白騎士

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 いつの間に接近したのか、まったく気付かなかった。 「……貴様、どこの騎士団だ?」  努めて冷静に問う、野盗騎士団の長。 「諸君らが知る必要は無い」  低いがよく通る声で短く、冷淡に答える白騎士。  声を聞いてようやく白騎士が男性だと分かった。若い男の声だが、威圧感というか静かな迫力がある。 「だ、団長! あいつ、天秤の紋章に白い鎧は『霞の白騎士』です!」 「霞の……。チッ! 雇われか!」  野盗騎士達が慌てふためくが、相手が一人だと見て戦闘態勢を取る。 「随分綺麗で高そうな鎧じゃないか。殺した後にそいつも『徴収』させてもらうぜ」  団長の声に合わせて、馬に跨った騎士二人が加速を始める。 「……浅はか」  呆れるように吐き捨てた白騎士が動き出した瞬間。その二つ名の通り、霞のように視界から白騎士が掻き消えた。  僅かに認識できたのは、月光を反射して煌めいた剣閃。  次に姿が見えたときは、既に二騎の背後だった。  そして、馬の背から崩れ落ちる騎士二人。その二人の体からは頭部が失われていた。一瞬で白騎士に切断されたようだ。 「くそっ! 囲んで同時にかかれ!」  怒号が飛ぶ。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加