霞の白騎士

4/7
前へ
/7ページ
次へ
 白騎士はその声も、包囲する騎士達も一切意に介さず、ゆらりと動き始める。そして次の瞬間には再び夜の闇に溶ける様に視界から消えた。  圧倒。まさに圧倒的。同じ騎士でもここまで実力に差があるのか。白騎士は次々と野盗騎士達の首を落とし、急所を貫き、物言わぬ死体に変えてゆく。  驚くべきはそのスピード。全身鎧を纏っているとは思えない程の速さ。白い鎧は誰の目にも映っておらず、野盗騎士の誰一人として一太刀を浴びせるどころか、一度も剣を防御することも出来ず命を散らせる。  剣撃もぞっとするほど鋭く、クガート鋼製の鎧を容易く切り裂き、貫く。  僅かな時間の戦闘で、残す野盗騎士は団長のみとなっていた。 「はぁ……はぁ……」  手下の影に隠れるばかりでまともに戦闘していなかった団長が、焦燥と絶望で冷汗が滝の様に流れ、手に持つ剣は小刻みに震えている。 「てめぇらみたいなヤツがいるから、俺たちの仕事が無くなるんだ!」  破れかぶれの突撃をかける団長。完全に逆恨みだ。自分達にちゃんと力があれば野盗の真似事なんてせずに済んだ筈なのに。  白騎士は突っ込んでくる団長の剣を必要最低限の動きでかわし、すれ違いざまに首を刎ねていた。首から先を失い、騎士は力なく地面に倒れる。  白騎士がこの場に姿を現してから数分で野盗騎士団は全滅した。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加