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返り血一つ浴びていない白騎士は、剣に付いた血糊を払い腰の鞘に収める。蒼いマントを翻して振り返り私のほうに近づいてくる。
「お怪我はありませんか?」
優しい声。表情が見えなくても安心できる声だ。
「あ……。はい、大丈夫です、ありがとう」
その言葉を聞くと、白騎士は膝を付き深く頭を下げた。
「私がもっと早く騎士団を捕捉し、殲滅していればこのような犠牲はでなかった……。申し訳ありません」
商人隊は賊騎士達の襲撃で護衛の傭兵を含め、甚大な被害が出ていた。死者も多数いる。
でもこの白騎士が助けてくれなければ隊の男達は皆殺しにされ、女は連れ去られ慰み者にされていただろう。もちろん運んでいた商品も全て略奪されていた。
「貴方が助けてくれなければ、私たちはきっと全滅していました! だから、頭を上げてください、優しい騎士様」
私の言葉を聞き、白騎士はようやく頭を上げる。
「ありがとうございます、強い心のお嬢さん」
白騎士は立ち上がり、座り込んでいる私に手を差し出した。私は素直にその手を取り、立ち上がる。
白い籠手は硬くて冷たかったが、それでも不思議と温もりを感じる気がした。
「まだ夜は長い。隊列を組みなおして出発しましょう。街まで私が護衛します。動ける者は手分けして怪我人の手当てを」
白い騎士が回りに声を掛ける。
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