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「せめて君を家まで送りたいが、この後、すぐ生放送の仕事だから……悪いな。じゃあ!」
龍ヶ崎は、全く悪びれもしない言葉と態度で謝罪すると、少し離れたところに停めてあったドイツ製の黒光りしたスポーツカーの運転席へと乗り込んだ。
つい俺は、自分がハンドルを握っていた自転車とスポーツカーを見比べてしまう。
当たり前だがあの店に来る者たちは、住む世界が全く違う人間だということを思い知ってしまう。
そのままもらった紙切れを、俺はズボンのポケットへ無造作に捻りこみ、生乾きの髪のまま11月の早朝の寒空の中1時間の道のりを愛車で帰っていった。
あー、風邪ひきそう……!
その瞬間、大きなクシャミが出る。
「早く帰って、熱いお風呂に入ろう」
独り言を呟きながら、ペダルをいつもより早めに漕ぐ。
案の定、それから1週間俺は風邪を引きバイトも学校も休むこととなってしまった。
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