出会い

10/10
1726人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「せめて君を家まで送りたいが、この後、すぐ生放送の仕事だから……悪いな。じゃあ!」 龍ヶ崎は、全く悪びれもしない言葉と態度で謝罪すると、少し離れたところに停めてあったドイツ製の黒光りしたスポーツカーの運転席へと乗り込んだ。 つい俺は、自分がハンドルを握っていた自転車(ママチャリ)とスポーツカーを見比べてしまう。 当たり前だがあの(、、)(カフェ)に来る者たちは、住む世界が全く違う人間だということを思い知ってしまう。 そのままもらった紙切れを、俺はズボンのポケットへ無造作に捻りこみ、生乾きの髪のまま11月の早朝の寒空の中1時間の道のりを愛車で帰っていった。 あー、風邪ひきそう……! その瞬間、大きなクシャミが出る。 「早く帰って、熱いお風呂に入ろう」 独り言を呟きながら、ペダルをいつもより早めに漕ぐ。 案の定、それから1週間俺は風邪を引きバイトも学校も休むこととなってしまった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!