0人が本棚に入れています
本棚に追加
ラッシュが始まる。最初は一発ずつの打ち上げだったけれど、次の手法でのお披露目だ。連続してはじける音が辺りに響いていく。あの中には俺が一から作ったものも入れてもらった。師匠の監督のもと様々な試行錯誤を繰り返しようやくできた一発だ。シンプルに単色で、ある大きさまで開く、ただそれだけ。
「あれだ」
思わず声に出た。ひとつひとつが開ききる前に次が開き始める中、詳しい流れは知らされてなかったけれどそれがわかった。師匠たちの作ったほかのものに比べて決して目立つものではない。
それでも胸にこみあげる想いは言葉にならない。
わずか数瞬で消えゆく光にいつのまにか涙があふれてきた。
師匠たちが見ていろと言った理由が分かった。打ち上げにも携わりたいとしつこく迫る俺に師匠たちは笑みとともにその言葉しか返さなかったのだ。経験が足りないからだと思っていたけれど、これを見せるためだったのだと今ならわかる。観衆でしかなかったころとはまた違う花火の良さに気付けた。
ラッシュも追わりもうすぐ打ち止めになる。一発目から数十分しか経ってないけれどそれ以上に濃密な時間を味わえた気がする。
小さくなっていく炸裂音の演奏も最後への演出の一部。ひときわ大きな打ち上げ音と数瞬後の炸裂音、今日一番大きく開いた花が散っていく夜空を瞳に焼き付け、そっと目を閉じた
最初のコメントを投稿しよう!