苦渋

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そうか、直行か。確かそうだった。ホワイトボードに行き先が書かれている。 壁際にホワイトボードが掲げてある。 そこには営業マンの名前、外出の行き先、個人別営業成績、今月の契約件数など一目でわかるように書かれている。猿渡がいた先月までは課の総合成績も猿渡個人成績もダントツ1位だった。今月になると急落どころの話ではなくて限りなくゼロに近い状態だ。ボードには彼の名前も成績も消されて後かたも残っていない。 自分の席に戻って座ると周りの人間がひたすらパソコンを打っているのでそこら中にパチパチとしたキーボードが音が鳴り響いている。 自分の机の電話が鳴る。外線電話だ。 「この前、契約したことに関してお聞きしたいことがありまして、猿渡さんは居ませんか?」 「猿渡は先月で退職しております。何か私でわかることがあれば対応しますが」 「え、そうなんですか。それは初耳だ。この契約は猿渡さんが親切で好感持てたから契約したんだけどな。辞めたならちょっと本社に帰って契約を見直さないとだな。わかりました。大丈夫です」 「あの~、もし私でわかることがあれば対応しますが、もしもし、もしも~あれ」 あっさり電話を切られてしまった。
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