苦渋

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☆☆☆☆☆☆ 「すいません。また契約取れませんでした」 「え、また駄目だったの」 顔を見上げると営業の2番手鹿島(かしま)が長い髪を触って申し訳なさそうな顔をしていた。 中田は手を挙げ、怒鳴りつける姿勢を見せた手を下ろした。 「仕方ない。また明日頑張るようにな」 鹿島は謝ると申し訳なさそうに背を向けた。 「はぁ~」 中田部長は下を向いた。 猿渡が抜けただけでまさかこんなに営業部の成績の他、営業マン1人1人にも影響を及ぼすとは思いもしなかった。鹿島も前より明らかに成績が落ちてやる気を無くしているのがわかる。猿渡は自分の成績だけではなくて周りの業務に対して鼓舞して本気を出させたり、責任まで背負う気遣いをみせ ていたのを改めて思った。 この調子が続くと次の会議で社長から今月以上に厳しい叱責を受けるのが火を見るより明らかだ。 眩暈がしてきた。 目の前が真っ暗にみえる。 想像するだけで胃が痙攣をし始める。 きっと誰かに今の境遇を相談したら、頑張れと言われるだろう。頑張れと人に言うのは簡単だが、自分自身では乗り切れそうにない。 このまま家に帰って布団にくるまって寝ていたい。 時計を見た。まだ高滝が帰ってこない。早く確認したいことがあるのに。「鹿島よ」 パソコンでネットサーフィンをして次の休日に彼女とどこの場所に行こうか思案中で腕を組みながら難しい顔をしている。 「はい、なんか呼びましたか」 「ちょっと調べ物があるからちょっと外に出てくる」
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