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中田部長は今まで営業課の業績の好循環は自分のリーダーシップが要因だと思っていたからタチが悪かった。事実を見誤っていたのを猿渡が抜けるまでは気付かなかった。
高滝自身の考えでは中田部長が叱責を受けたとしても自業自得だから仕方ないとして課の業績低下は避けたく、なんとかしたいと思ったが、猿渡が退職する時は決意は固く説得するのは時すでに遅しだった。
「中田部長の方から謝ってみてはどうですか。何か変わるかもしれないですよ」
「電話したらすぐに切られるんだよ。こちらが話をする前にな」
それではもうどうにもならない。
もう中田部長は猿渡のことは諦めて自分が猿渡の分も働いて少しでも営業課が前のように契約を取り戻せるようにしてはどうかと思った。
「猿渡は次にやることは何か聞いてなかったか」
「いや、その辺は辞める時は行ってなかったですよ」
「なら、まだうちの会社に戻ってくるチャンスがあるんじゃないか」
もう無理だって。高滝は中田部長のしつこさに嫌気がさしていた。
こぼした高級ワインはもう戻すことは出来ないのだと言ってやりたかった。
「わかりました。もう一度猿渡に連絡して説得してみます」
「頼んだぞ。わが社のわが課の命運がかかっているのだからな」中田部長はレジへ伝票を持って支払う。
「そろそろ会社を抜け出してきてから時間が経って課の人間も心配していると思うから急いで戻る。高滝はこれからどこに行くつもりだ」
「もう一軒得意先へまわる予定です」
こんな話し合いの時間があるなら一軒でも契約が取れる努力をした方が良い。そりゃ営業課の成績は下がるわけだ。
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