1人が本棚に入れています
本棚に追加
空は厚い雲に覆われ、ただでさえ空気の重たい火葬場は更にどんよりとした雰囲気を醸し出している。
高く伸びた火葬場の煙突から、遥の身体は煙となって空に立ち昇っていた。華奢で真っ白だった遥の身体も、煙になるとあんなに黒くなるのだな、と宗介は雲に混じっていく遥の煙を見上げながら思った。
「あなたを待つ時間は、私にとってとても贅沢な時間なの」
初めて約束の時間に遅れた日、遥はそう言って僕に笑いかけた。
この時すでに、遥はまもなくこの日が来ることを分かっていたはずだ。
また僕のことをどこかで待っていてくれているのだろうか。
実のところ、なんだか現実感に欠けているのだ。きっと僕がまだ遥の死を受け入れることが出来ていないせいだろう。
遥がいなくなっても、この理不尽で残酷な世界で、僕はまだこの惨めな人生を続けていかなければならないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!