衝動

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衝動

次の日も宗介は病院に顔を出した。 母の見舞いもそこそこに、宗介は遥の病室に向かった。 遥はベッドの上で眠っていた。 綺麗な寝顔だ…。 もし白雪姫の隣で遥が眠っていたら、王子様は間違えて遥にキスをしてしまうんじゃないか、と思うくらいに遥の寝顔は宗介にとって眩しかった。 宗介はしばらく遥の寝顔に見惚れていたが、なんだかいけないことをしている気がしてきて、ベッド脇に用意してある面会者用のイスに腰を掛けて本を読むことにした。 「宗介くん」 急に名前を呼ばれてハッとした。いつのまにか眠ってしまっていたらしい。 遥はベッドに横になったまま顔を宗介のほうに向けて微笑んでいた。 「ごめんね。よく眠っていたから君のことを起こさないようにと思ったのだけど、まさか僕も寝ちゃうなんてね」 「いいの。来てくれてありがとう。今日は少し疲れているから、横になったままでもいいかしら?」 確かに今日の遥は少し顔色がよくない。 本当に申し訳ないと思った。自分の気持ちばかりを優先して遥の体調のことなど全く考えていなかった。自分の図々しさに呆れてしまう。 「君は今日は体調悪そうだし、もう帰るね。勝手に来ちゃって本当にごめん」 宗介は遥に謝ると椅子から立ち上がり、帰り支度を始めた。 「だめ。行かないで!」 遥は上体を半分起こし、精一杯の大きな声で宗介を呼び止めた。 宗介はその声の予想外の大きさに驚いた。 遥の寂しそうな表情と、今遥が発した言葉が宗介の中で合わさって、宗介の胸は思いがけず熱くなった。 そして同時に、宗介は胸の中に隠していたどす黒い負の感情が溢れ出てくるのを感じた。 自分のことを認めてくれる人に自分の弱い部分の全てをさらけ出し、それでもなお自分を認めてもらいたいという欲求が抑えられなかった。
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