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馬鹿力で逃げて、トイレへ走って髪を上げて鏡を覗いたら、とんでもないものを見つけた。
髪の毛を下ろしてれば見えない位置、はっきりと跡が付いていて、雫は真っ青になった。中学生てこんなことするの! と慌て果てた。
なんだか最近、中学生になったばかりの自分には刺激の強いことばかり起こる。頭を抱えたくなる。
「あーあ、なんで俺のことわかんないかな……畜生」
教室に残された彼はひとり淋しそうに呟くと帰路に着いた。
背が伸びて声が低くなっただけで、こんなにも気付いてもらえないものかと淋しくなった。
髪を下ろした雫が今度こそ鞄を取りに仕方なく教室へ戻ったら、彼はいなくなっていた。
文句を言いたかったけれど、顔を合わせたらまた泣いてしまいそうだ。
背が高くてカッコいい人ではあったなあとぼんやりと思ったが、されたことを思い出すと頭にくる。
そしてこれを透子に見られないようにしないと、自分のせいなんかじゃないはずなのに困ったことになる。結局、頭を抱えた。
「ただいまー」
「おかえりー」と言ったのは母ではなくさっき聞いた声だった。
咄嗟に言葉がでない。彼が草太と仲良く遊んでいる。
「おおおお母さん!」
取り敢えず状況把握が出来なくて、透子に叫んだ。
「あら。おかえり、雫」
「おかえりじゃなくて!」
雫は嫌なものでも見るように震えながらそれを指差した。
人を指で差しちゃダメです、そう教わって育ったからこそ指で差してやった。
「あー、壮? 今日夕飯食べていくから」
ん? 壮くん? ぎゃあと雫が叫んだ。
背が伸びていて、声変わりをしていて、大人っぽい雰囲気になっていたからまるで気づかなかったが、彼は裏に住んでいた東雲壮だ。幼馴染の一人で、彼の家庭の事情で二年間ほど会っていない。
一年前に戻って来ていたが、雫は戻って来ていたことなど今の今まで全く知らなかった。
「ぎゃあてあんた、壮に何かされたの?」
雫が真っ青になる。
「壮、何したの? 言いなさい」
透子の恐ろしい笑顔と尋問に壮は焦った。
「逃げるぞ、雫!」
そうして無理やり雫の手を掴むと相田家を飛び出した。
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