第二十二章 永遠

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 気付くとアルベルトはフェイの腕の中に抱かれていた。また意識を飛ばしてしまったようだ。ふと視線を向けると、辺りを夕焼けが包み込んでいる。地平線に沈み行く真っ赤な太陽。まるで燃えるように紅く染まる空。アルベルトはその美しさに思わず息を呑む。 「綺麗」  吐息だけが微かに漏れるようなアルベルトの声に、フェイは小さく微笑んだ。 「昔から東は日出ずる国テバン。そして西は、落陽の国リーハと呼ばれていた位だ」  夕焼けに染まる横顔に、アルベルトはそっと痩せた指先を伸ばす。視線を向けたフェイは、少し瞳を潤ませて微笑んでくれた。 「私は、幸せ者だ────」  沢山の人に愛され生きた。どんな時も、誰かが必ず寄り添っていてくれた。フィリアを旅立ち七年。この道を選んだ事を悔いた事もあった。間違いだったとすら思った。それでも、フェイに会う事が出来た。その心を救う事が出来た。そして何より、アルベルト自身何度も救われた。 「ありがとう、フェイ」  漆黒の瞳から耐え切れず涙が零れ落ちる。もうその涙を拭ってやれない事を、許してくれ。別れは辛い、けれどどうか悲しみに沈まないで欲しい。この心は今、嘗てフェイがこの胸に落とした言葉の意味を知った。苦しみ生き抜いた先に、フェイはこんなにも幸せな光を見せてくれたのだ。アルベルトは胸の内、そう語り掛ける。 「おやすみ、アル────」  優しく髪を撫でるフェイの腕の中で、アルベルトはゆっくりと瞼を閉じ、そして確かに感じた。自らが選んで来た道は、どれも間違いではなかった事を。  遠ざかる意識の中、救う事の出来なかった愛する者達が、優しく笑いかけてくれた────。 第二十二章・完
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