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次の日、朝日が昇る頃、アルベルトは何時ものように目を覚ます。隣では天使のような少年が未だ深い眠りに浸っている。弟のエルバントは、柔らかい金色の髪、白い肌、母親譲りの顔立ちもそっくりだが、甘えん坊で少しわがままな性格だけは真逆。それは立場が違うだけで、アルベルトがエルの立場であれば、やはり甘えたいしわがままにもなるだろうとアルベルトは思っていた。
愛おしい弟を起こさないように布団を抜け出し農作業用の服に着替えを済まし、薄暗い城の廊下を静かに歩き、朝靄の立ち込める農道へと歩みを進める。馬で通る道を歩きで行くのだから、日が昇る前に出ても畑に到着する頃には薄い桃色の空は青空に変わり、谷間に吹く風も少しだけ暖かくなっている。
「やあ、おはようございます王子。今日はどちらへ?」
髭を生やした男が帽子を取って頭を下げた。
「おはよう。レッドさんの所に行くんだ」
「そうですか、今日は暑くなりますからね、気を付けて下さい」
頭を下げる男に手を振ってまた足を進める。国はずれのレッドの畑は少しだけ遠い。それでもシンの考えた名前を一刻も早く伝えたくて、アルベルトの足取りは軽かった。
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